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2022年「ウッドショック」

2021年から世間を騒がせている「ウッドショック」とは、簡単にいえば木材が高騰・不足している問題です。木材は、一戸建ての土台、柱、梁など多くの部分に使われるため、ウッドショックは木造住宅の高騰や工期遅れに直結します。

2022年になった現在、ウッドショックの状況はどうなっているのでしょうか?

 

 

ウッドショックとは木材が不足・高騰している現象

ウッドショックとは、住宅建設に使う木材が不足し、木造戸建ての価格高騰や工期の遅れといった事態が生じている現象です。

 

価格高騰

ウッドショックは、2021年初春頃から始まりました。上記グラフのように集成材や製材などを筆頭に、あらゆる木材の価格が高騰していることがわかります。

 

取引数も減少

価格高騰のみならず、新築戸建て取引の数にも影響がでています。

新築戸建住宅売買業、建物売買業、土地売買業は、上記グラフの通り、新型コロナウイルス蔓延で初めて緊急事態宣言が発出された2020年4月、5月に大きく取引数を落としましたが、その後は一転してコロナ前を上回る回復を見せました。

しかし、回復傾向が長く続くことはなく、2021から2022年にかけてはコロナ前を下回る取引数で推移しています。

 

ウッドショックの要因

ウッドショックは、新型コロナウイルスの世界的な蔓延を起因とする、以下のことが要因となっています。

 

●建築需要の増加

●労働力の減少

●物流の停滞

●海外木材への依存

 

コロナ禍で在宅時間が長くなったのは、日本だけではありません。世界的に巣ごもり需要が拡大したことで、家のリフォームや建築需要が上がりました。さらに、2021年頃まで世界的に住宅ローン金利が低下していたことも、建築需要向上に拍車をかけたものと考えられます。つまり、世界的に木材の需要が増えたということです。

海外の木材は、林業や物流業者、加工業者、プレカット業者など、様々な人や企業が関わって日本の建設現場まで届きます。コロナ禍では物流が停滞し、労働力も減少したため、市場に出回る木材が大幅に減りました。

 

 

山も木も多い日本ですが、実は木材自給率は40%ほど海外の木材供給に依存している中、世界的に木材の需要が上がり供給が減ったことで、日本の建築業界に木材不足・木材高騰・工期延長という深刻な状況をもたらしたのです。

 

 

 

●2022年ロシア・ウクライナ情勢によりウッドショックが再燃

世界的な木材不足がもたらした「ウッドショック」。ただ2021年終わり~2022年初めにかけて、徐々にではありますが木造の流通にも回復傾向が見られていました。

しかし、2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻が始まったことでウッドショックが再燃しています。

 

 

2022年3月 ロシアによる「非友好国」への単板等の輸出禁止

2022年3月9日、ロシア政府は「非友好国」に対してチップ・丸太・単板といった木材の輸出を禁止することを決定しました。ロシアがいうところの「非友好国」には、日本も含まれています。

ロシアは、世界の約2割の森林を有する森林大国。これまでの経済制裁に加え、ロシアによる木材の禁輸は世界的に影響を与えるものであり「第二次ウッドショック」ともいわれています。

 

ロシア・ウクライナ情勢による影響

 

日本は製材や集成材を除けば、そこまでロシアからの輸入木材に頼り切っている状況ではありません。しかし、ロシアによる禁輸は欧米諸国にも及んでいるため、世界的な木材不足が日本の建設業界に与える影響は大きいものと推測されます。

また、ロシアの木材は国際機関による「森林認証」が停止されています。

 

ロシアのウクライナ侵攻を受けて、森林の持続可能性に配慮した木材であることを証明する国際機関が相次ぎ、ロシアとベラルーシからくる木材の森林認証の一時停止に踏み切る。森林認証は住宅の構造に使う木材のほか、家具や紙類、燃料材などでも世界大手メーカーや日本の大手による取得が進んでおり、これらの環境配慮をうたう木材の調達に影響が広がる可能性がある。

 

ロシアの経済制裁、禁輸、そして森林認証停止により、ウッドショックは世界的に長期化する可能性があります。

また、まだロシアから日本への輸出が禁止されていない「製材」の輸入が止まれば、月間1.7万棟の住宅に影響を及ぼすとの試算もあります。

 

ロシア産製材は天井の下地材として重宝されており、輸入が止まれば、月当たり住宅1万7000棟分の天井の下地材に影響を及ぼすという試算もある。

 

 

ウッドショックはいつまで?「国産材」でウッドショックは解消できないのか

豊富な山々や木々に恵まれている日本。かつては、木材自給率も100%に近いものでした。しかし先述通り、今ではわずか40%ほどになっています。

国産材が流通するようになるのは一朝一夕にとはいかないでしょう。「木」が「木材」となるまでには、伐採、乾燥、加工……など様々な工程を経なければなりません。

森林の多い日本ですが、森林面積の約半数を占めるのは「保安林」。林業も縮小しているので、すぐに輸入材を補えるほどの国産材が流通するとは考えにくいのです。

 

国産材も高騰が続く

 

 

木材不足を受け、国産材も高騰しています。丸太の価格については、急騰ののち横ばいで推移。木材は、いまだ高騰基調が継続している状況です。

国産木材について、経済産業省は「今後も輸入価格と概ね同様の動きをしていくとが見込まれる」としており、木造戸建ての価格高騰や工期遅れも継続するものと考えられます。

 

ウッドショックは国産材回帰のチャンスでもある

ウッドショックにより国産材に注目が集まっていることは事実です。

林野庁はウッドショックを受け、外国産の木材から国産材への切り替えを支援すべく、2021年度補正予算から木材乾燥施設の整備など必要な措置を講じています。2022年度予算の予備費からも、国産材流通の推進に対して約40億円を支出するとしています。

 

 

長期化するウッドショック……木造戸建価格の高騰も継続か

一度は回復傾向も見られたウッドショックですが、2022年2月からのロシアによるウクライナ侵攻により再燃し、長期化も危惧される状況となっています。価格高騰のしわ寄せがいくのは、エンドユーザ。つまり、家を建てる人・取得する人です。

今後、新型コロナウイルスの蔓延が落ち着いてきたり、ロシア・ウクライナ情勢に動きが見られたりしても、各々の問題の根源が解消するまでには時間を要すると考えられます。国産材回帰への期待も高まりますが、すぐに林業が活性化し、その他設備等も整うわけではありません。

ウッドショックが再燃し、長期化する可能性がある今、家を建てる「タイミング」としていつが適切なのだろうか……と考える方も多いことと思います。しかし「木材の高騰」だけを見るのではなく、住宅ローン金利や税制優遇特例、そして家族の状況・意向などあらゆる要素を踏まえて住まいの購入や住み替えの時期を検討することが大切です。

 

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