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実際にあった判例

土壌汚染の可能性を知りながら、告知せずに転売した売主業者の不法行為責任が認められた事例

 

前所有者から土壌汚染の可能性を告知されていたにもかかわらず、宅建業者がその可能性を告知せずに転売し、引渡後に土壌から油分が発見されたために買主が告知義務違反に基づく損害賠償を請求した事案において、土壌調査や油汚染対策費用等の損害賠償責任が認められた事例(東京地裁 令和2年6月11日判決 ウエストロー・ジャパン)

 

1.事案の概要

宅建業者Y (被告)は、平成27年2月、前所有者のAより本件土地を購入し、同年12月、買主X(原告)に自宅建設用地として1億4800万円で転売した。

AがYに提出した告知書には、「土地汚染の可能性」欄の「敷地の住宅以外(店舗・工場等)の用途での使用履歴」について、「知っている」「S58年頃用途:工場」と記載されていたが、YはXに提出した告知書には「知らない」と記載した。また、重要事項説明書でも土砂汚染(油による汚染も含む)の可能性には言及しなかった。

Xが本件土地を購入後、専門調査会社に依頼した土壌調査の結果、土壌汚染対策法で定める特定有害物質による汚染は認められなかったものの、油分(ガソリン、軽油・重油及び機械油)、油膜及び油臭が認められ、全石油系炭化水素(TPH)濃度は、1万2千mg/kgで、一般に油膜及び油臭が出ることが多くなるとされる5千mg/kgの2倍超となっていた。

XとYは、土壌の入替え工事について協議を開始したが、その後、Yは「油汚染は瑕疵担保の問題ではないと弁護士から聞いた」として話合いを一切拒否するようになった。

Xは、油分の拡散を防ぐために、基礎部分全体をコンクリートで覆う工法により自宅を建設した。

Xは、Yに対し、①瑕疵担保責任、②不法行為又は債務不履行責任としての告知義務違反に基づき、油汚染による土地評価差額4,960万円(主位的請求)、または、土壌調査や油汚染対策費用等の損害賠償3,871万円(予備的請求)を求めて訴訟を提訴した。

 

 

2.判決の要旨

裁判所は、次のように判示して、Xの請求を一部認容した。

(売主Yの責任について)

宅地建物取引業者は、購入者等が売買契約書等を締結するか否かを決定づけたり、価格等の取引条件に相応の影響を及ぼしえるような重要な事項について知り得た事実については、信義則上、これを購入者等に説明、告知する義務を負い、この義務に反して当該事実を告知せず、又は不実のことを告げたような場合には、これによって損害を受けた購入者等に対して、不法行為責任を負うと解するのが相当である。

本件土地は、少なくとも半分の広さのそれほど深くない所に油膜や油臭が認められ、ガソリン、軽油・重油等のTPH濃度も1万2千mg/kgで、油膜及び油臭が多発する5千mg/kgの2倍超となっており、それにより住居者に対する健康不安などといった心理的嫌悪感を与えるものであるといえる。

したがって、本件土地に油を含有する土壌があることは、住宅用地として購入する場合には、買主が売買契約を締結するか否かを決定づけたり、価格等の取引条件に相応の影響を及ぼしえる重要な事項に当たるというべきである。

そして、Yは、前所有者から具体的に土壌汚染の可能性を指摘されていたことに加えて、一般に工場の種類によっては土壌汚染対策法上の特定有害物質をはじめ、健康被害をもたらし得る物質の使用可能性が認められることなどからして、宅地建物取引業者としては、本件売買契約の締結に先立ち、土地の過去の利用履歴を調べるなど、本件土地の土壌汚染等の有無やその可能性について相応の調査を行ってしかるべきであった。

それにもかかわらず、Yは、本件売買契約の締結時にXに交付した告知書において「土壌汚染の可能性」について「知らない」と記載し、前所有者による告知書の内容も一切告げなかったものであり、Yは、告知義務に違反したといえるから、Xに対して不法行為責任を負うべきである。

 

(損害額について)

Xの主位的請求である油汚染による土地評価差額減価格の主たる根拠となっている掘削除去工法による費用3,600万円は、既に本件土地上に建物が建築されている以上、同工法は困難であり、Yの不法行為と相当因果関係を有する損害とは認められない。

一方、予備的請求については、本件土壌調査費用39万円、基礎コンクリート工事費用総額270万円余の約40%である100万円をYの不法行為と相当因果関係のある建築費用増加分相当額の損害と認められる。

またYがXに対し、本件土地の土壌に油分が含まれていること又はその可能性を告知していれば、売主であるY側でそれを除去する措置を講じ、又は除去費用相当額が売買代金から控除された可能性が高いものと考えられる。よって、油の除去費用は、Yの不法行為と相当因果関係を有する損害と認められ、その費用は424万円を下らない。

以上により、Xの損害額は合計563万円余となる。

 

 

3.まとめ

裁判所は、健康不安など心理的嫌悪感を与える事項は取引に影響を及ぼし得る重要な事項であり、その告知義務に反して事実を告知しない場合には損害を受けた購入者等への不法行為責任を免れないとした。

油分は、土壌汚染対策法の特定有害物質に指定されていないが、産業廃棄物の規制対象となっているもの、行政の指導要綱所定の基準を超える等、高濃度のものについて、瑕疵に該当するとされた次の裁判例があるので参考にされたい。

「売買土地に区の指導要綱所定の基準を超える油分が存在したことが土地の瑕疵にあたるとされたが、買主の悪意・過失により売主の瑕疵担保責任は否定された事例」(東京地判 平21・3・19 RETO79-92)

一般財団法人不動産適正取引推進機構「RETIO」より

 

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