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2025年3月の新設住宅着工戸数が急増した理由と今後への影響は?

2025年4月30日に国土交通省が発表した新設住宅着工戸数が、前年同月比で39.1%増と大きな伸びを示しました。この数字の背景にある事情について考えてみましょう。

 

新設住宅着工戸数急増の理由は?

新設住宅着工戸数は2024年5月以降、2025年1月まで、9カ月連続で前年同月比を下回る動きを見せていましたが、2月に2.4%の微増となり、3月は39.1%という大幅増で、2カ月連続の前年同月比プラスとなっています。着工戸数は8万9,432戸ですが、この数字は、3月の着工数としては過去10年で最多となりました。

 その内訳は、持ち家が37.4%増の2万2,867戸で3カ月ぶりの増加、貸し家が50.6%増の4万2,525戸で2カ月連続の増加、さらに分譲のうち一戸建て住宅は29カ月ぶりのプラスとなる23.3%増でした。

 なぜ急に新設住宅着工が増えたのか、不思議に思う方も多いのではないでしょうか。

 これには、実はカラクリがあります。それは2025年4月に、建築基準法の改正が行われたからです。業界では「4号特例の見直し」といわれていますが、要は建築物の省エネ化を進めるにあたって、建築物の重量が増えることによる安全性を確保するための法改正、ということになります。

 政府は現在、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、さまざまな取り組みを行っています。こうしたなかで、2025年4月以降に新築される住宅に関しては、「省エネ基準適合住宅」であることが義務化されました。

 省エネ基準適合住宅とは、高断熱・高気密や省エネ設備の採用などにより、暮らしのエネルギー消費量を少なくした住宅のことを指しています。

 こうしたなかで行われたのが、「4号特例の見直し(縮小)」です。

 4号特例とは、建築基準法において、建築確認の対象となる木造住宅等の小規模建築物で、建築士が設計を行う際には、新築、増築、改築、移転の際に提出する建築確認申請において、構造関係規定や防火避難規定等の審査が省略される特例のことです。

 ここで言われている「小規模建築物」を4号建築物といい、具体的には、「2階建て以下」「延べ面積500㎡以下」「高さ13m、軒高9m以下」のすべてを満たす木造建築物と、非木造の場合は「平屋で延べ面積200㎡以下」の建物が該当します。

 このように言ってもイメージしにくいかと思いますが、要するに大半の戸建て住宅は、この範囲に含まれると考えて良いでしょう。

 これが見直し(縮小)されたということは、つまり、新築される戸建て住宅の大半において、建築確認申請の一部免除が受けられなくなったということです。

 今後はどうなるかというと、この改正により、これまで4号建築物に該当していた建物は、「新2号建築物」と「新3号建築物」に分かれます(図表1)。

 新2号建築物は、木造2階建てすべてと、木造平屋の場合は200㎡超のものになります。

 また新3号建築物は、木造平屋200㎡以下のものが該当します。そして、新3号建築物に関しては、建築確認申請の一部免除がそのまま受けられます。

 すなわち、2025年3月の新設住宅着工戸数が前年同月比で大きく伸びたのは、4月以降の4号特例の縮小によって、建築確認申請の手間が増えることを嫌気した住宅メーカーや工務店が、駆け込み的に新築を増やしたことが理由であると考えられます。

 

図表1

 

図表2

 

 

請負金額の値上げと完工までの期間の延長も!?

 

 さて、今回の改正によって、どのような影響が生じてくるのでしょうか。

 新3号建築物に関しては従来どおり、建築確認申請の一部免除が受けられるので問題ありませんが、新2号建築物には少なからぬ影響が生じてきます。

 というのも従来までは、4号特例によって必要のなかった構造関係規定等の書類や、省エネ関連の書類の作成・提出が必要になるからです(図表2)。なかでも2階建木造住宅をメインにしてきた住宅メーカーや工務店にとっては、さまざまな書類の提出に加えて、確認審査項目が増えるため、設計担当者の増員が必要になるケースも考えられます。

 また、建築業界はただでさえ人手不足であることに加え、ここ数年で建築資材などの価格が急騰しているのに加えて、事務処理の手順が増えることから、請負金額が高くなることも考えられますし、契約から完工引き渡しまでの期間が延びたりすることも考えられるでしょう。

 もちろん、新設住宅着工戸数についても、増加傾向が続くということはありません。今回の増加は駆け込み的な建築ラッシュですから、一時的な要因であり、4月以降の数字は、この反動によって、大幅な減少になることが予想されます。
 

 

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