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不動産豆知識

子供が引き起こすマンションの騒音トラブル

マンションでよくある騒音トラブル

マンションや集合住宅ではそこで暮らす住民の距離が物理的に近いため、どうしても住民間によるトラブルが多くなってしまいます。今回はそんな近隣住民間のトラブルの中でもよく話題に上がる 「騒音」についての判例を見ていこうと思います。

 

 

 

上の階に住む幼児の歩き回る音がうるさくて訴訟!

今回の判例は集合住宅で暮らすXさんと、Xさんが居住し始めてから8年後に新たに引越してきたYさん一家による近隣トラブルについてのものです。

 

Xさんの訴えによるとXさんが部屋を借りて住み始めたころには、さして上の階の音も気にならなかったようなのですが、Yさん一家が引っ越してきた後から“子供の足音”などの騒音に悩まされる事となってしまいました。

Yさんの長男は当時3~4才であったという事もあり、在宅中には「走り回る音」や「飛んだり跳ねたりする音」などが特にひどかったようです。

これらの騒音に悩み果ててしまったXさんが父親であるYさんに、不法行為による “損害賠償請求”及び慰謝料200万円と弁護士費用(40万円程度)を求めた事例が今回扱う判例となります。

 

 

 

損害賠償請求とは?

損害賠償請求とは相手方の当事者の “債務不履行”や“不法行為”によって被害をこうむった場合に、その損害に対する賠償を求める請求の事を指します。賠償の対象は権利や財産などの比較的把握しやすいものだけではなく、名誉や自由といった損害の範囲が分かりにくいものでも損害賠償請求することが出来ます。

不法行為に関する条文は以下の通りとなっています。

 

不法行為

民法709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法710条

他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

 

損害賠償請求権の時効消滅について

損害賠償請求権も請求しないままいつまでも放置してしまうと、“時効消滅”してしまいますので注意が必要です。生命または身体を害する不法行為については民法改正により時効消滅までの期間が2年間増え、時効消滅までの期間も民法改正により被害者に有利な形に変更されています。

民法724条2項

人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には時効によって消滅する。

一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないとき。

二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

 

未成年による不法行為

今回の判例ではYさんの長男のもたらす騒音が問題となっていますが、Yさんの長男は3~4才であるという事もあり、本人の代わりに保護者であるYさんが責任追及される形となっています。

民法712条

未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。

 

 

 

裁判に至るまでのやり取り

Xさんが裁判所に訴えるまでにXさんとYさんの間にはどのようなやり取りがあったのでしょうか。またXさんとYさんの対応には何も問題は無かったのでしょうか?

 

まずは管理人さんへ相談!

まず、XさんはいきなりYさんへ直談判しに行くことはなく、まずは管理人さんへ騒音について相談しに行ったようです。

相談した甲斐もありYさん一家の騒音問題について管理組合でも話題が取り上げられ、Xさんが騒音に悩まされ始めてから約1か月後には、管理組合名義で各戸に “生活音、特に子供の起こす騒音についての注意 ”を促す書面が配布されました。

しかし残念なことにYさんの家からの騒音には、何も改善は見られなかったようです。

 

Xさんの直接交渉

Xさんは騒音に悩まされ始めてから1年後に「騒音を抑えてほしい」という旨の手紙を投函しましたが、これに対してYさんは “天井をもので突いた”ことに対する非難の手紙をXさんに返しています。

その翌月にはYさんのお宅へ訪れて交渉したようですが、Yさんは乱暴な口調での対応であり、交渉もままならなかったようです。

 

このやり取りの2か月後、Xさんの自宅のそばで偶然YさんとXさんが遭遇した際には、Xさんから再度配慮してほしい旨を伝えたようですが、Yさんは 「すでに努力しており、これ以上努力は出来ない」、「Xはうるさい」、「Xが直接Yへ訴えても無駄であるので、他の人に訴えるように」など、乱暴な口調で対応されるという出来事がありました。

 

Xさんの奔走

管理組合はXさんからの問い合わせに基づいて“生活音への注意喚起を求める書面”を掲示板に掲載し、再度各戸へ“生活音への注意喚起を求める書面”の配布を行うなどの対応を取りました。

また、Xさんは警察にも相談を持ち込み、警察官も何回かマンションへ訪れているようですが、解決には至らなかったようです。

 

マンションの遮音性

実はXさんとYさん一家の暮らすマンションの床は、日本建築学会というところが定める“遮音性能基準”と照らし合わせると、遮音性については基準よりもやや劣る指数となっていたようです。とはいうものの、暗騒音(今回問題となっている子供の騒音が発生していないときの騒音測定のこと)の測定結果は27dB~29dBとなっており、“鉛筆を用いて執筆する音”程度の騒音レベルであるという事でした。

 

また、Xさんは自ら騒音を測定する機械を購入して実際に測定を行っていたようです。騒音はYさんが退去するまでほぼ毎日続いていたようであり、大方50~65dB程度の騒音が時には深夜まで連続してXさんの部屋まで到達していることがあったようです。

 

騒音の目安は以下の通りとなっています。

50dB (エアコンの室外機程度):かなり大きく聞こえる

60dB ( チャイムや時速40キロで走る自動車の内部程度 ):非常に大きく聞こえかなりうるさい

 

Xさんによる調停の提案

調停とは紛争している当事者が裁判所など第三者を間に挟んで話し合いを行い、お互いの妥協点や紛争解決を図る手段の事です。XさんはYさんに騒音の差止めと損害賠償を求める調停を持ち掛けましたが、Yさんはこれに応じなかったために紛争は裁判所へ持ち込まれることとなりました。

 

 

 

裁判所の考え

さて、無邪気な子供が引き起こす騒音についてXさんはなかなか困った事態に陥ってしまったようですが、XさんとYさんのやり取りの中ではいくつか気になる点もあったのではないでしょうか。

 

マンションの性質について

本件のマンションは遮音性については日本建築学会の基準にはやや劣るものの、3LDKのファミリー向けのつくりとなっており、子供の居住も予定していると裁判所は認めました。

 

Yさん一家の部屋からの騒音について

約1年半にわたってほぼ毎日、時には夜間から深夜にかけて50~65dBという大きな音がXさんの部屋に届いているのは事実であり、騒音は長期的に連続してXさんの部屋に到達していることもあったため、Yさんには子供をしつけるなど住まい方を工夫する必要があったと言う事ができ、しつけや住まい方の工夫を求めるXさんの期待も理解できる。と裁判所はコメントしています。

 

Yさんの対応について

YさんはXさんの要請を受け、床にマットを引くなどの対応を取りましたが効果は不明であり、それ以外の対策を行ったかについても明らかではないとされました。

その一方でXさんの交渉の場面では、「これ以上は静かに出来ない」など、Xさんの申し入れを拒んでおり、その対応についても極めて不誠実なものであると裁判所は理解を示しました。

 

Xさんの精神的苦痛について

XさんはYさんの不誠実な対応によってやむなく裁判へと至ることとなり、訴訟に備えて騒音を計る機械の購入をして測定しなければならなくなったと裁判所は認めました。

また、Xさん夫婦は騒音問題に精神的にも参っていることが認められ、Xさんの妻に関しては“咽喉頭異常感”や“不眠症”などの症状を引き起こしてしまったことも本件が要因だと認められるとしました。

 

 

 

判決

裁判所は以上の事柄やYさんの不誠実さなどを考慮し、今回の騒音問題に関しては一般社会生活上Xさんが受忍すべき限度を越えていたというのが妥当であるとしました。

そのためXさんの訴えた慰謝料は30万円程度相当を認め、弁護士費用に関しても6万円を認めるという判決となりました。

 

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