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宅地建物取引の判例

(無免許営業幇助)

営利法人の6件の転売取引に関与した買主側媒介業者代表者に無免許営業幇助を認定し罰金刑を言い渡した事例

 

関係会社2社において、宅建業免許を受けずに、土地区画整理事業地内の土地を転売目的で購入し、約3年の間に計6件の売却を行った行為について無免許営業に該当するとし、その媒介を行った買主側媒介業者の代表に、無免許営業幇助を認定して罰金刑を言い渡した事例(名古屋高判 令和4年9月15日判決 ウエストロー・ジャパン)

 

1事案の概要

宅建業免許を有していない、a社(日用雑貨品卸売業等・代表A)及びその実質的な子会社b社(不動産賃貸業等・実質的経営者A)、(以下、本件各社)は、Aが副組合長であるP土地区画整理事業の区域内の土地について、Y(被告・宅建業者y社の代表者)や第三者から、土地の所有者が売却を希望しているので購入してもらえないかと言われて購入し、その取得から数年の間である平成30年5月から約2年の間にa社は4物件の売却を、b社は平成29年6月及び平成30年6月に2物件の売却を行い、各取引についてy社は媒介業者として関与して買主より媒介手数料を受領した。

Yは、この一連の取引に関し、Aによる本件各社の本件各取引は宅建業法12条1項の無免許営業に該当し、Yには無免許営業罪の共同正犯が成立するとして起訴された。

原審(名古屋地判 令和4年3月10日)は、本件各社による無免許営業を認定し、YはAと意思を通じて自己の犯罪として本件無免許営業に関与したもので、無免許営業罪の共謀共同正犯が成立するとして、Yに罰金50万円を言い渡した。

Yは、原審判断について、訴の受理に関する違法、事実誤認、法令適用の誤り、量刑不当等を主張し控訴した。

 

 

2判決の要旨

裁判所は、原審の無免許営業罪の共謀共同正犯の認定を破棄し、無免許営業幇助を認定して、Yに罰金25万円を言い渡した。

 

(1)公訴権濫用の主張について

Yは、a社がY以外の業者を仲介入として宅地等を売却した事案は立件されていないことから、Yが関与した事案だけが立件された本件は、公訴権を濫用した不平等起訴で、公訴は棄却されるべきと主張する。

しかし、検察官の裁量権の逸脱が公訴提起を無効ならしめる場合は、公訴の提起自体が検察官の職務犯罪を構成するような極限的な場合に限られ、本件はそのような場合に当たらない。審判の対象になっていない他事件は犯罪の情状等の事情が明らかでなく、他事件の公訴権ほ発動の状況と対比することのみによって本件公訴提起が検察官の裁量権を逸脱したということはできない。

 

(2)本件各社の無免許営業の該当性について

Yは、本件各社が行った本件各取引は無免許営業に該当しないと主張する。

そこで検討すると、転売された各土地は、AがY又は第三者から土地の所有者が売却を希望しているので購入してもらえないかと言われ、本件各社が購入したもので、本件各取引がされた当時は遊休不動産と指摘されていたこと、本件各土地の購入時期はいずれも仮換地指定の後であり、いずれ宅地として整備され、値段が上がる可能性が高かったといえること、Aにおいては、本件各社が利用しないままこれらを所有し続けるつもりはなく、住宅や商業施設等を建築したい者が現れれば売却することを想定していたことなど、いずれも、購入時において、本件各社に本件各土地を事業に利用する具体的な予定、計画があったとは認められない。

そして、本件各取引の相手方は、本件各会社の業務とは関連なく、その土地の取得を希望した個人や会社であり、本件各取引の売買代金は、購入した金額より高くなっていること、本件各社は、他にも本件各取引と同様の所有地の売却や、土地の購入をしていたことが認められる。

以上によれば、本件各社は、事業に利用する予定や計画がないまま、仮換地の指定がされていて、いずれ宅地化されて価格が上がる可能性が高い本件各土地を購入したが、いずれ転売する予定であって、実際にも購入時よりも高く本件各土地を売却し、ほかにも同様の土地売買をしていたのであるから、積極的に土地を買い求め、転売を図ったものではなくとも、営利目的で宅建業をしたことになるというべきであり、原判決の本件各取引が宅建業法12条1項所定の無免許営業に該当するとした結論に誤りがあるとはいえない。

 

(3)Yの正犯性について

Yは、本件各土地の売却の意思決定そのものに関与していないし、売主から媒介手数料や売主が転売により得た利益の分け前を受けてもいない。

Yの行為は、宅建業法上の媒介をする行為に当たるもので、本件各取引を容易ならしめるものではあるが、Yが自分たちの犯罪としてAらと一緒になって本件各取引をしたとまでは言えないことから、Yについては無免許営業幇助の事実を認定すべきであり、無免許営業罪の共同正犯とは認められない。

 

(4)判決

Aが行った宅地建物取引業の無免許営業は、期間の長さ、取引物件の個数、売買代金の額などからすると、必ずしも軽微とはいえない。Yは、その事情を知った上で媒介業者としてこれを幇助したもので、その刑事責任は軽視できない。そうすると、Yに対しては、主文の罰金刑が相当である。

 

 

3まとめ

無免許者の宅建業取引に、宅建業者が媒介等により関与することは、宅建業法が目的とする「不動産取引の公正の確保・悪質な不動産業者の排除」を脅かす、無免許営業という犯罪行為を、免許を持つ宅建業者が手助けすることであり、宅建業法においては、宅建業法12条1項の違反行為に不当に関与した(同65条2項5号)等として行政処分の、刑法においては幇助犯(刑法62条の19として刑事罰の対象となる。本件では、売主の無免許営業を知りながら、取引の幇助を行った刑事責任は軽視できないとして、宅建業者代表者に、罰金刑が言い渡されている。

無免許営業を知りながらの幇助は論外であるが、売主・買主が、無免許営業の認識なく転売等の取引を行おうとする場合があるので、媒介業者においては、取引に際して、買主には購入目的の確認を、売主には不動産の取得経路と売却理由の確認を行うことが重要であり、無免許営業が疑われる場合には、より慎重な対応を行う必要がある。

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