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不動産豆知識

相続税法大改革

相続法が1980年以来、約40年ぶりに大幅に改正されました。

 

◎自筆証書遺言の方式緩和

近年、遺言書を残す人が増えています。「終活」への関心の高まりもひとつの要因ですが、やはり遺された家族が困らないよう、あるいは遺していく財産を有効に使ってもらえるようにという思いの現れと言えるでしょう。

 

自筆証書遺言の作成においては従来、財産目録も含め遺言書の全文を自書する必要がありました。改正法では、目録の部分についてのみ、パソコンでの作成や通帳コピーの添付など、自書によらない書式が認められるようになります。遺言の本文については今までどおり自書でまた目録を含むすべてのページには署名押印が必要ですが、作成者の負担はかなり軽減されることになります。

 

さらに、作成した遺言書の法務局での保管が可能になります。法務局では遺言書原本が保管されるとともに、その画像データが全国の法務局で共有されます。これにより、紛失や第三者による書き換えといったトラブルを回避できるだけでなく、遺言者が亡くなったあとの手続きも変わります。従来、自筆証書遺言は自宅などで保管され、開封する際には家庭裁判所に持ち込んで検認を受ける必要がありましたが、その作業が不要となり、すぐに取り出すことができるようになります。

 

なお、この管理体制の強化によって、自筆証書遺言の効力はより確かなものになりますが、公正証書遺言の効力には及びません。とはいえ、公正証書にするとなると準備や手続きは非常に煩雑でハードルが高く、公正証書にしなくても誰でも比較的簡単に安全な形で遺言書を残せるようになったことは大きな改善点といえます。

 

 

◎遺された配偶者への配慮

相続時に、配偶者のその後の生活を支える対策として、それまで住んでいた家に住み続ける権利を保証する「配偶者短期居住権」と「配偶者住居権」が新たに設けられました。

 

★配偶者短期居住権

被相続人の所有していた建物に、相続開始時に配偶者が居住していた場合、遺産分割が終了するまでの間、無償で住み続けることができる権利です。従来、被相続人と配偶者の間では使用貸借契約が成立していたという推認がなされ、被相続人が亡くなったあとも配偶者はそれまでと変わらず住み続けることができるとされてきました。しかし、たとえば遺言によって第三者に建物が遺贈されることになっていた場合などは、その押認が成立しないため、配偶者の居住が認められない(今まで住んでいた家を追い出される)事態が起こることがありました。

配偶者短期居住権によって、仮に配偶者が当該建物を相続できない場合でも、建物の新たな所有者から居住権消滅請求を受けてから6ヶ月は住み続ける権利が保証されるため、配偶者は突然家を追い出されることなく、その間に方策を講じることができます。

 

★配偶者居住権

配偶者が今までどおり建物に住むことのできる、基本的には終身の権利です。登記項目にもなる権利であり、第三者に対抗することができますが、あくまでも「居住」だけ認める、所有権を伴わない権利が「配偶者居住権」です。

 

配偶者居住権は、配偶者の相続する遺産の内訳に偏りがあって生活に支障をきたすことが予想される場合などに、配偶者に不利益のないよう保護することを最大の目的としており、遺産分割の選択肢の一つとして新設されました。たとえば、居住建物および土地の価値が非常に高かった場合には、家を相続してしまうと、現金での相続がわずかになってしまい、配偶者が老後の生活費に困ってしまうことが考えられます。

 

配偶者居住権導入のメリットを、具体例で見てみましょう。(図1左)

この場合、自宅の評価額が妻(=母親)の相続分を超えており、自宅を相続した妻は子供に差額の1,000万円を支払い、子供は預貯金の3,000万円を相続し、不足分の1,000万円を妻から受け取るという理屈になります。しかし妻にほかに財産がなければ1,000万円を支払うことができないし、現金での相続がまったくないために、その後の生活に困る恐れがあります。

 

そこで、妻(=母親)が「配偶者居住権」を取得することによって、居住権と預貯金を相続して安心して生活することができます。(図1右)

 

配偶者居住権の評価額の算定については、固定資産評価額を基準とする方法や、賃料を基準とする方法など、いくつかの方法が提案されていますが、いずれの場合も、相続時の配偶者の年齢から算出さてる平均余命年数を考慮した計算式になっています。一方、子が相続すくことになる負担付き所有権は、自宅の評価額から配偶者居住権の評価額を差し引いた額になります。

 

配偶者居住権は、配偶者がなくなったとき(もしくは放棄したとき)に消滅し、子に帰属することになります。

 

 

◎身内の事情に合わせたその他の配慮

従来、生前贈与については、法律上の明記はないものの、相続人に対する贈与はかなり過去のものであっても遺留分計算基礎に算入するのがルールとなっていました。改正法では、算入するのは相続開始前10年間の贈与のみに限定されました。

 

ただし、それが他の相続人の損害になるような場合は、その限りではありません。仮に、10年以上前に財産の全額は長男に贈与されていたとすると、明らかに他の兄弟の損害となります。そのようなことがないよう保護するための措置となっています。

 

また今回の法改正には、高齢化社会ならではの措置として、相続人以外の親族への配慮が盛り込まれています。具体的には、先に長男が亡くなっていて、長男の妻(被相続人にとっては息子の配偶者)が、被相続人の介護に従事していたような場合です。従来はこうしたケースであっても長男の妻の貢献は評価されず、相続財産を取得することができませんでした。

 

このように今回の法改正では、従来トラブルの原因になりがちであった法の矛盾を見直し、現代の家族の形や生活の実態に即したルールが取り入れられました。結果として不利益を被る人が少なくなり、相続時の親族間のトラブルの減少が期待できます。

 

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